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東京高等裁判所 昭和48年(ネ)828号 判決

原告・被控訴人・附帯控訴人 神奈川県信用保証協会

理由

引用に係る原判決事実欄の請求原因(一)及び(四)項記載の各事実並びに第一審原告がその主張の配当期日に出頭して配当異議の申立をしたが完結に至らなかつたことは当事者間に争がなく、同請求原因(三)1ないし3項記載の各事実は《証拠》を綜合してこれを認めることができる。

そして、第一審原告がその主張の代位弁済後該弁済による求償債権につき一部弁済を受けたので、右求償債権の額は、それぞれ、昭和三八年七月一九日の借受金に関する分が金一、六六一、九二〇円、同年一一月三〇日の借受金に関する分が金一、六二二、三七七円、昭和三九年七月六日の借受金に関する分が金二、八八五、五〇〇円、同月一〇日の借受金に関する分が金三、三五四、六二五円、となつていることは第一審原告の自陳するところである。

以上確定の事実によると、第一審原告は訴外加藤嘉市に対し代位弁済額の全額につき求償をすることができ、そして本件のように特段の合意(原判決事実摘示の請求原因(三)3項記載の特約)が存する場合には民法第五〇一条第五号の規定の適用がなく、第一審原告は訴外嘉市に対し右の全額につき債権者である訴外横浜信用に代位することが許され、これをもつて第一審被告のような後順位抵当権者にも対抗できるものと解すべきであり、また、代位弁済による求償権の内容をなす弁済金額に対する利息ないし損害金の割合も、本件のように特段の合意(前記請求原因(三)3項記載の特約)が存する場合は、民法第四四二条第二項の規定に拘らず、右の合意によることができ、それが先順位抵当債権者である訴外金庫の有する権利の範囲内である限りこれをもつて後順位抵当権者である第一審被告に対抗できるものと解するのが相当である。

してみると、第一審原告は前記求償債権残額の合計九、五二四、四二二円及びこれに対する日歩金四銭の割合による最後の二年分の損害金二、七八一、一三一円より第一審原告が既に第一回の配当において最後の二年分の損害金の内金として交付を受けたと自陳する金四六二、九〇四円を控除した金二、三一八、二二七円(この請求が先順位抵当債権者である訴外金庫の有する権利の範囲を超えるものでないことは明らかである。)につき配当を受けうるものとする第一審原告の主張は正当であつて、原判決添付第二配当表(更正配当表)は別紙配当表(省略)のとおり変更さるべきである。

従つて、本件控訴は理由がなく棄却さるべきであるが、本件附帯控訴は理由があり、原判決は変更を免れない。

(裁判長裁判官 満田文彦 裁判官 真船孝允 鈴木重信)

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